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不動産コラム

売却

売り出し価格と「3つの価格」

 売り出し価格は不動産会社による査定価格を参考にしていただきながら、売主様自身に決定していただきます。ただここで査定価格を参考にしていただく前に、ひとつ知っておいていただきたいことがございます。それは、査定方法の〝弱点〟です。

◆査定方法の弱点

 不動産会社が居住用不動産を査定するときは、ほとんど「取引事例比較法」という手法が用いられます。取引事例比較法とは、近隣の条件が似ている物件が過去に売れた金額を根拠とし、今売ったときにいくらで売れるかを推察して査定額を算出する方法です。「事実」を元に算出するため、中立的かつ実質的な価格の算出が可能ですが、次の2つの点が弱点だといえます。

1.事例が少ないと精度が落ちる

取引事例比較法では、参考とする過去の事例の「数」が重要です。成約事例は多ければ多いほど査定価格の精度は上がりますが、エリアや時期によっては適切な成約事例が取得できないことがあります。事例が1個や2個では情報が少なく、査定の精度が下がってしまいます。

2.過去の事例の〝背景〟が不明

成約事例を抽出する「レインズ」では、その物件を売却した人の「意向」や「理由」などの背景まではわかりません。中には早く売りたい事情があって相場より安く売った人や、高額売却を目指して何年もかけてやっと売却した人もいるかもしれません。そのため、過去に売れた事例が必ずしも「相場」と言い切ることはできず、その金額を用いて算出する査定価格もやはり相場との乖離がある可能性があります。

◆「3つの価格」を考えておく

査定方法には前述のような〝弱点〟があるため、査定価格は「絶対」とはいえません。そのため売り出し価格を考える上では「売主様の希望」を含めた価格を加味して考えていただきたいのです。

  もちろん、ご希望通りの価格で売れるとは限りません。しかし、査定価格とその根拠を聞くと「これくらいで売りたいなぁ」という価格が見えてくるものです。また「この金額では絶対売りたい」という〝下限〟もあるのではないでしょうか。「売りたい価格」と「売らなければならない価格」、そして「売れる価格」。この3つの価格をあらかじめ明確にしておくことで、売り出し価格が決めやすくなるはずです。

このように3つの価格を設定したとしましょう。

  もちろん「売りたい価格」を追求すべきではありますが、売り出し価格は売主様のご意向や競合物件の有無に応じて戦略的に考えなければなりません。「売却にどれだけ時間がかかってもいい」と考えている方は少なく、多くの方は希望する売却時期があるものです。

  たとえば「2ヶ月後にはどうしても売りたい」と考えている方が「売りたい価格」の3300万円で売り出すのは少々無謀ともいえるでしょう。そういった状況にあれば、まずは「売れる価格」の3100万円で売り出してみて、1ヶ月間経っても反響が得られず残り1ヶ月で売れる見込みがなさそうであれば、3000万円、2950万円……と「売らなければならない価格」に近づけていく。といった戦略が取れます。

  私たちがお伝えしたいことは、あくまで査定価格は参考値であり、売主であるあなたの都合や意向を優先していただきたいということ。売れる見込みがない金額をご希望している場合には、適切な根拠を伝え、適正価格をお伝えさせていただくこともございます。しかしまずは、ご希望をお聞かせください。ご希望に添える形でご売却を目指すのが、我々の役割です。

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