境界越境
今回は「境界越境」についてご紹介します。
敷地の上を電線が通っている不動産を売却する際は、特別な手続きが必要なのですか?
そうですね。その電線がご近所の家に引き込むための線なのか、電力会社などの電気事業者が管理している線なのかで変わってきます。また、その線がどれくらいの高さにあるかによっては、土地の利用に制限がある場合もあります。
ご近所の線だった場合にはどうでしょうか。
はい。敷地の上空については具体的に何mまでが所有権の範囲になるのか法律では決められていませんが、敷地内に他人の線が通っているということは、将来的に、例えば建て替えをするときに、改善する約束を書面で行っていることが多いので、まずはその書面があるかを確認して頂きたいです。もし無い場合は、不動産会社にご相談ください。
電力会社の場合も書面があるのでしょうか。
ご近所さんとの書面は覚書(おぼえがき)という書面に対し、電力会社などの送電線が通っている場合は、電線の敷地通過に関する契約書を締結している場合があります。
契約書まで作成しているのですね。
以前は契約書を締結しないままの状態が多かったのですが、最近では、電気事業者が契約締結を求める動きを増やしているようです。
どのような内容の契約なのですか?
電線の設置を目的とする、地役権等を設定する契約です。電線を通すために上空を使うための内容や、安全面からあまり高い建物を建てられないなどの土地の利用制限があると記載されていることが多く、登記することでその不動産を売却した場合も次の所有者に引き継がれます。
建物の高さにも制限がかかる場合があるんですね。契約書が無い場合はどうすればいいですか?
その場合もまず不動産にご相談下さい。送電線の所有者が誰なのかを確認し、建築の制限や、その他に問題がないかを確認します。また、電線が通っていることは、過去の判例では瑕疵に該当することになっており、現行の民法では、契約不適合の問題になりますので必ず売却の際には買主への説明が必要です。
分かりました。その他に気を付けることはございますか?
よく聞かれることとしては、高圧線の下にある建物で、電磁波が健康上問題ないかということです。
確かに電磁波のことは気になりますね。
電力会社の方に現地で調査をしてもらうことも可能ですが、一般的には地上1.5mの高さで10マイクロテスラと言われており、世界的な健康に関するガイドラインの基準と比べても低い数値になってます。また、WHOからも電磁波と健康影響に関する証拠は因果関係とみなせるほど強くはないとしているようです。
そうなんですね。では送電線が通っている場合は、地役権設定登記の有無や、契約書や覚書が無いかを確認すること、もし無かった場合でも不動産会社に相談すれば確認や、必要手続きのサポートをして頂けるんですね。
そうですね。ありがとうございました。