
2025.09.25
空白の13年はここで区切り。話し合いを前に進める遺産分割(昔のことを全部ほじくり返すより、今できることからサッと決めていくお話)
ご相談はSさん(長男・60代)。
お父さん・お母さんが亡くなってから13年、長女・次男の3兄弟で話し合いが止まったままでした。
いちばん大きな財産は実家の家です。これをどう分けるか、どう手放すか(売るか)がポイントでした。
今、困っていること
- お父さんの死後13年、お母さんも去年亡くなりましたが、相続の手続きが終わっていない。
- お母さんはしばらく一人暮らし→介護施設→その後ご逝去。
- 税金はかからない見込みだけど、兄弟の話し合いがまとまらない。
原因
お金が減っていて、気持ちがギクシャク
当時は相続税の基礎控除が大きい時代(9,000万円)で、お金は税金の心配が少なそうでした。
父親が介護施設に入るようになった頃通帳管理をしていた妹が多額の現金の出し入れしていたことをめぐって不信感が生まれ、実家への出入りも禁止しており、話が止まってしまいました。
兄弟だけでは、もう話が進まない
気まずくなって連絡が減り、今さら話し合いを始めるのが難しい状態に。
過去を全部調べ直すと、時間も心もすり減る
昔の出費をすべて調べ直すには、時間と体力がかかります。
まずは「今、残っているもの」をどう分けるかに集中するのが現実的です。
このままだとどうなる?
- 実家が空き家のまま。固定資産税や修理代がかかる。
- 相続の手続きが終わらないので、財産が動かせない。
- 共有(みんなの名義)のままだと、何を決めるにも足並みがそろわない。
まず決める3つ
- 共有名義をやめる(まずは話し合いの紙=遺産分割協議書を作る → 名義の書き換え=相続登記)
- 家は売ってお金にする(これを換価分割といいます)
- 昔のことを全部追いかけず、いま残っている財産を公平に分けることを優先
相続実務士からの提案
- 気持ちをそろえる:
「残っている財産を3等分」というわかりやすい目標で合意づくりを手伝います。 - 紙にして、名義を直す:
① みんなで決めた内容を書いた紙(遺産分割協議書)→② 名義の書き換え(相続登記)→③ 売る手続きの順で一気に進めます。 - お金の計算は先に共通費用を引く:
片づけ費用、仲介手数料、税金などは先に引いて、残りを3等分にします。
税金は、条件が合えば「家を売るとき税金を少なくできる制度」(例:居住用3,000万円控除)を使えることがあります※。 - 不仲を広げない:
13年分をすべて調べ直すと、時間も気力も消耗します。いま決められることを早く決める方針です。
※制度が使えるかは条件があります。最終判断は税理士など専門家にご確認ください。
実際にやること(3つだけ)
- ① 分け方を紙にする(遺産分割協議書)
- ② 名義を直す(相続登記)
- ③ 家を売って、費用を引いた残りを3等分
お願いする専門家(だれが何をする?)
- 相続実務士:話を聞く/問題を整理/分け方の提案/段取りを決める/関係者の調整/売却まで並走
- 司法書士:名義の書き換え(相続登記)や、売買に関する登記
- 不動産の担当(宅建士):家の査定、売却の手続き
- 税理士:税金が少なくなる制度が使えるかの確認、税金の計算
- 土地家屋調査士:測量・境界の確認(必要なとき)
まとめ
- 昔のことを全部調べ直さない。まずは今あるものを公平に分ける。
- 共有をやめて、名義を直す。それから売って3等分。
- 順番は「紙にする → 名義を直す → 売る」。これで短い期間で前に進めます。
